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郵便局でも住宅ローンが申し込める!?

2007年10月、郵政民営化か実施され、かつての郵政公社は持株会社である日本郵政株式会社のもと、郵便事業を担当する日本郵便(郵便事業株式会社)、銀行業務を担うゆうちょ銀行(株式会社ゆうちょ銀行)、保険事業を担当するかんぽ生命(株式会社かんぽ生命保険)、郵便局のネットワークを運営する郵便局(郵便局株式会社)が設立されました。さらに2012年には郵便事業と郵便局が日本郵便株式会社に一本化されました。このうち、ゆうちょ銀行が従来の郵便貯金業務を引き継ぎましたが、これまでの貯金業務だけではなく、融資機能を持たないことには、本来の意味での銀行ということはできません。

自民党政権下では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は2017年までに完全に民営化されることになっていましたが、民主党の郵政改革法ではこれを撤回、日本郵政が株式の3分の1超を持つ子会社になりました。それが再びの政権交代によってどうなるのか注目されています。その融資業務のなかでも、最も注目されているのが、個人向けのローンです。もともと郵便局の顧客は基本的に個人顧客が中心ですから、個人向け業務から入るのが現実的であるのはいうまでもありません。しかし、融資業務は商品開発もさることながら、相談業務に始まり、信用力調査から債権管理まで高度なノウハウを必要とします。専門の人材の育成が不可欠であり、一朝一タに取り組めるものではありません。

そこで注目されたのが、住宅金融支援機構のフラッフラット35なら、商品の概要は住宅金融支援機構が決定しているため、金融機関としてはフラット35の枠組みにしたがって、ある程度定型的に事務処理を行うことができます。経験もノウハウも乏しいゆうちよ銀行でも、ある程度の時間をかければ、取扱いが可能なのではないかという判断だったようです。しかし、株式会社になったとはいえ、ゆうちよ銀行の株式は、政府出資の日本郵政株式会社が3分の1超を持つことになります。実質的にはまだ”官業”であることに変わりはなく、そうした企業が、「これまで純粋な民間企業が苦労して市場に定着させてきた分野に参入するのはけしからん、官業の民業圧迫だ」という声が強まりました。

民間との競合をできるだけ避け、民間金融機関が融資しにくい分野に特化する必要があるわけですが、民間が融資しにくい分野となれば、いっそう高度な知識・経験を有する人材が必要になってきます。ほとんどそうした人材がいないゆうちよ銀行にとっては、ますます困難になってきます。その課題を克服するためには、特定の分野において豊富な経験を持つ民間企業との協力関係が不可欠になります。こうした曲折を経て、まず2008年5月から地方銀行のスルガ銀行と提携、同行の女性や個人事業主などに向けたローンの取扱いをスタートさせました。当面三大都市圏の直営店舗のみですが、段階的に地方にも拡大していくものとみられます。いうまでもなく、郵便局のネットワークは全国に広がっています。

メガバンクの支店のない地方都市でも必ず存在しますし、隣町まで出ないと信用金庫もないという地域であっても、郵便局はあります。今後の郵政改革の動向次第で、郵便局の整理統合があったとしても、最終的には最低でも市町村に1か所の郵便局は残していく方針といわれています。ですから、これまでは住宅ローンの相談や利用に隣町などまで出かけなければならなかった人でも、近くの郵便局で相談したり、契約できたりするようになる可能性があります。民間金融機関との調整や、ローン業務に精通した人材の確保など、まだ実施には多少の時間はかかるかもしれませんが、郵便局で住宅ローンを申し込めるようになる日がやってくるでしょう。

ローンの選択肢が広がる銀行代理店がスタート

こうした動きのなかでもうひとつ注目されるのが、銀行の代理店業務の自由化。従来から銀行が代理店を設置して、その主要業務を委託することは可能でしたが、何かと制約が多かったのです。当初は複数店舗が認められず、設置場所に許可が必要な上、銀行業務の一部しか扱えないなどの制約があったのです。時代とともにこうした規制が緩和されてきたのですが、それでも銀行の100%出資の子会社にしか認められないなどの制約が残っていたため、実際には銀行代理店は全国でも100店舗ほどしか存在していないのが現実でした。それが、2005年11月に銀行法が改正され、代理店業務が大幅に緩和されました。2006年4月施行で、これによって銀行とは資本関係のない一般企業が銀行の代理店業務を行えるようになり、しかも、業務内容も預金の出し入れから預金口座の開設、送金、個人ローンまで扱うことができるようになりました。

法人向けローンは財務データなどをもとに機械的に審査する「定型ローン」しか認められていませんが、個人向けの商品・サービスであれば基本的に現在の銀行が扱う商品・サービスのほぽすべてを扱うことができるようになったわけです。銀行代理店が増えそうな拠点としては、スーパー・百貨店、自動車販売業などの小売業、旅行代理店、住宅展示場などのサービス業などが挙げられます。スーパーや百貨店などではすでにATMが設置されるなど、銀行業務の一部のサービス提供を受けられるようになっていますが、今後は店舗内にサービスカウンターが設置され、専任の担当者を置いて、銀行の商品・サービスに関する相談から申込みまで可能になってきます。

順調に代理店が増えてくれば、買物のついでにスーパーや百貨店で住宅ローンの相談や申込み・契約の手続きもできるようになります。もちろん、住宅展示場を見学、気に入ったその場でローンの相談、申込みまでできてしまうようになるかもしれません。ことに、メガバンクは大都市部中心の店舗展開ですから、地方の中小都市に住んでいる人はなかなか利用できませんでした。利用店舗はどうしても地元の地方銀行や信用金庫などに限られてしまいます。住宅ローンの世界が、かつての住宅金融公庫中心の時代であれば、そうした中小金融機関でもほとんどが公庫の代理業務を行っていたので問題はなかったのですが、最近のように民間金融機関中心の時代になったとき、地方都市では選択肢が限られて、大都市部に住む人と格差が生じているのが現実です。

それが地元にあるスーパーや百貨店などで地元に支店のない銀行のローンも申し込めるようになれば、飛躍的にローンの選択肢が広がります。全国どこにいても、あらゆる銀行のローンを調べたり、申し込んだりできる時代がやってくるかもしれないのですから、特に地方に住んでいる人にとっては朗報といえるでしょう。欧米では、すでにこうした制度は当たり前になっています。大規模なスーパーや百貨店には必ずといっていいほど銀行代理店がカウンターを設け、銀行の商品・サービスを提供しています。人材育成などに多少の時間はかかるでしょうが、さほど遠くない時期にわが国でもそうしたカウンターが誕生することになるのではないでしょうか。これまでに、野村澄券が野村信託銀行と提携して預金・送金などの代理店業務を開始したほか、セブン銀行が三井住友銀行と提携して、イトーヨーカ堂内のセブン銀行で三井住友銀行の住宅ローンをはじめとする商品の取次ぎなどを始めるといった動きが出ています。

ローン利用で住宅価格の割引制度適用も

さらにSBIモーゲージやりそな銀行などは、ディスカウントポイント方式という、当初一定の事務手数料を支払えば金利が低くなるローンを実施しています。詳細は後にふれますが、購入時の資金繰りに多少なりとも余裕のある人なら、こちらを利用すると完済までの総負担額をかなり少なくできます。住宅ローン利用時に、購入する住宅を担保とするカードローンが利用できるようになる銀行もあります。三井住友信託銀行の旧中央三井信託銀行店舗の場合には、融資額は100万円から1000万円までで、住宅ローン残高とカードローン利用額の合計が購入住宅の担保評価額の100%までとなっています。金利は一般のカードローンの金利が10%以上ときわめて高いのに対して、こちらは住宅ローンとさほど変わらない低金利。住宅購入時には何かと物入りなことが多いですから、いざというときに重宝するかもしれません。

三井住友銀行では、各種の割引サービスのついた住宅ローンを取り扱っています。たとえば、同行の住宅ローンを利用して注文住宅を建てるときには、建築費が2%から5%安くなり、分譲住宅や中古住宅を買う場合には購入価格の0・5%から1%程度安くなります。対象となる住宅メーカー、工務店、不動産会社などは限定されますが、たとえ1%といえども、金額が大きいだけにありかたい特典です。外資系の金融機関では、個人の信用度に応じて金利を変えるローンを実施しているところもあります。返済能力の高い人に対しては金利を格段に低くし、多少リスクのある人にはそれなりの金利を設定して柔軟に対応しようということです。

さらに、評価の高い国家資格を持っている人については、最大1%まで金利を引き下げる制度もあります。ローンを利用する人の条件に応じて金利を変えるのは欧米では当たり前のことですが、わが国ではまったく新しいシステムであり、今後どこまで広がるかその動向が注目されています。外資系だと、経営環境が悪化するとすぐに撤退してしまい、その後の扱いがどうなるのか不安という面もありますから、注意しておいたほうがいいでしょう。さらに、最近は各種の疾病にかかったときに住宅ローン返済が免除される保険を付帯できるローンが増えています。

メガバンクでは三井住友銀行が「ガン、脳卒中、心筋梗塞」の三大疾病を対象とする「三大疾病保障付」のローンを開始して話題になり、その後三菱東京UFJ銀行はさらに高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変の四つの生活習慣病を加えた「七大疾病保障付住宅ローン」の取扱いを始めています。みずほ銀行にも同様のローンがあります。三菱東京UFJ銀行の場合、七大疾病によって就業不能に陥った場合、1年間毎月ローン返済額が補償され、1年間その状態が続いた場合には、ローン残高が全額補償されます。つまり、その後はローンの返済が一切免除されるというわけです。

その分一定の保険料支払いが必要になります。年齢などの条件によって異なりますが、40歳の男性が2000万円の借入れを行ったケースでみると、初回が1136円、5年後が1244円、10年後が2234円などとなっています。毎月の返済額に加えて、この保険料の負担が必要になるわけです。このほか病気やケガ、リストラや倒産などによって収入がダウンしたり、一時的に失業したりしたときのための所得補償保険を附帯できるローンも多く、さらに、保証料無料、繰上返済手数料無料などを打ち出している金融機関も増えています。まずは金利タイプや金利水準、各種の費用負担といった基本的な条件をもとに、自分たちが利用できるローンのなかからいくつか候補を絞り込み、その上でこうした使い勝手の良さなども考慮しながら、実際に利用するローンを決めるようにするのがいいのではないでしょうか。

金利引下げ以外のユニークなローン

民間金融機関では、金利引ドげ制度による金利面での競争だけではなく、各種の使い勝手の良さを追求したさまざまなローンが登場しています。店舗網が充実し、知名度も高いメガバンクに対抗するため、地方銀行などの中堅以下の金融機関やネット銀行、ノンバンクなどがユニークな商品を発衣するケースが多いようです。まずシングル女性向けのローンが挙げられます。10年以上前までは、住宅ローンの世界ではシングル女性は歓迎されない存在でした。金融機関の評価は低く、まずローン審査を通りません。このため、ほとんどの不動産会社では独身女性というだけで相手にされないのが現実だったのです。それが女性の社会進出が急速に進み、男性以上の収入を得る人が増え、社会的な評価も高くなってきました。

このため、不動産会社や金融機関によっては、独身男性より、場合によってはファミリー世帯より高い評価を与えているところもあります。実際、「女性のほうがはるかに貯蓄額が多く、返済計画もシッカリしています」というのが関係者の一致した声。このため、いまやシングル女性は不動産会社や金融機関にとって諸手を挙げて歓迎する存在に評価が一変しているのです。こうした変化を受けて、女性に限定したローン商品を手がける金融機関が増えているのです。たとえば、三井住友信託銀行の旧中央三井信託銀行店舗では当初の金利引下げを行うのはもちろんのこと、出産後1年間は別途金利を引き下げる、医療保障保険を付ける、一部繰上返済手数料を無料にするといった特典のついたローン商品を扱っています。

また、スルガ銀行では、一部繰上返済手数料だけではなく、保証料も無料にしています。さらに当初の担保評価の120%まで融資が可能で、頭金が十分用意できない女性も購入が可能になります。さらに50歳以上の人や在日外国人を対象としたローンなどもあります。新生銀行では、利用者が指定した一定額まで自動的に引き落とされ繰上返済に回されるローンを取り扱っています。毎月の返済額が10万円であったとしても、12万円まで引落しOKとしておけば、12万円以上の残高があれば12万円が引き落とされ、うち2万円は無料で繰上返済に充当されます。これだと、繰上返済手続きなしで当初の予定以上に残高が早く減っていくことになります。

さらに、東京スター銀行では、同行への預金が増えた分だけ金利負担が少なくなるローンを実施しています。たとえば、当初の借入額が3000万円だとしても、多少余裕ができて同行に500万円預金すれば、その500万円をローン残高から差し引いて毎月の返済額を計算してくれます。その分、毎月返済額が格段に減少します。もちろん、余裕資金はそのまま繰上返済してしまったほうが得策ですが、手元に自由にできるお金がないのは不安なもの。特に自営業などで資金繰りのための資金を残しておきたいという人にはうってつけかもしれません。ただ、こうしたメリットがあるため、当初の金利設定は通常より若干高くなっているようです。

住宅ローン金利の大幅な引下 げの影響とは

長い間低金利が続き、住宅ローン金利も大幅な引下げによって、史上最低水準が続いてきました。景気の先行きにも明るさがみられず、多くの人が「当分金利の上昇はないだろう」「金利の低い変動金利型や固定期間選択型の固定期問の短いタイプが一番」と考えてきました。実際、長い間住宅ローン利用者の半数以上が変動金利型を利用してきたのです。しかし、いつまでも超低金利か続くわけではありません。いますぐに金利が上がるということではないにしても、中長期的な視点からみれば、金利上昇は避けられない環境になりつつあります。実際、2013年に入ってから金利上昇によるリスクの大きい変動金利型の利用者が減っています。

住宅ローンは20年、30年と返済が続くのですから、その間には、必ず金利上昇の波が押し寄せてきます。そのときにアダフタしないように、万全の選択、安心の返済計画を立てておく必要があります。もちろん、バブル時のような短期間での急速な金利上昇は考えにくい環境とはいえ、中長期的な視点からみれば、金利がゆるやかにに上昇していくことはまず間違いないところでしょう。それだけに、金利引下げによる低金利メリットに目を奪われるだけではなく、その後のリスクについても十分に理解して、より安全度の高い住宅ローンを選択し、確実な返済計画を立てることが重要になってきます。

最近は、金利上昇時のリスクを少なくし、それでいて低金利メリットもある程度亨受できるミックス型のローンも増えています。全期間固定金利型と変動金利型などを組み合わせるわけです。金利引下げに目を奪われるだけではなく、こうしたさまざまな商品を検討して、より安全確実で、しかもできるだけトクできるようなローンを利用するようにしたいものです。また、この金利引下げ制度、誰でも利用できるものとは限りません。適用条件はさほど難しいものではありませんが、給与振込み、公共料金引落し、系列のクレジットカードの利用などが条件になります。そうした手続きが必要になる点にも注意しておく必要があるでしょう。

民間金融機関は金利引下げ競争

この引下げ効果はどれほどあるのでしょうか。変動金利型の例でみると、3000万円の借入額で35年元利均等返済を利用する場合、2・475%なら毎月返済額は10万6846円ですが、引下げ後の0・875%に下がると毎月返済額は8万2949円にダウンします。毎月2万4000円近くも軽減されるのです。年間にすると30万円近くも負担が軽くなるわけです。また、固定期間選択型10年もので、本来3・60%の金利が1・40%に引き下げられているケースでは、3000万円を3・60%、35年返済で利用した場合の毎月返済額は12万5731円ですが、引下げ金利では9万392円になります。毎月3万5339円の軽減で、これが10年間続くわけですから、420万円以上もトクする計算です。これにひかれてやってくるお客が少なくないことは、容易に想像できます。

もちろん、この金利引下げの内容は金利タイプだけではなく、金融機関によっても異なります。固定期間の長いタイプの引下げに力を入れるところもあれば、変動金利型や固定期間の短いタイプの金利引下げを前面に押し出すところなどさまざまです。金利引下げ制度といってもその内容は金融機関によって千差万別なので、自分たちが利用できそうな金融機関をひと通りチェックして、そのなかから自分たちが利用したいと考えているローンの引下げ内容がどうなっているのかを比較検討して判断するようにしなければなりません。しかも、注意が必要なのは、この金利引下げ、完済まで続くとは限らないという点です。

多くの場合、期間が限定されています。以前は、固定期間選択型の場合、金利引下げは当初の固定金利期間に限定され、その後は店頭表示金利に戻るのが一般的でした。しかし、それでは固定期間終了後には返済額が大幅に増えて、利用者の家計への影響が大きくなります。このため、固定期間終了後も一定の金利引下げが続くようにしているところがほとんどです。その金利引下げには、ふたつのタイプがあります。ひとつは、当初一定期間の引下げ幅を大きくして、その後は引下げ幅が小さくなるタイプ。いまひとつが、完済までの全期間を通して引下げ幅が変わらないタイプです。当初の引下げが大きければ、借入時の何かと物入りな時期の負担が軽減されるメリットが大きいのですが、その後引下げ幅が小さくなると、その時点で返済額が大幅に増加する可能性があります。

これは、利用者にとってたいへんリスクが大きいので、最近の傾向としては、当初の引下げ幅が大きい夕イプは廃止して、完済まで同じ金利引下げが続くタイプが主流になりつつあります。これは、利用者のリスクが小さくなるという意味でいいことだと思います。当初の引下げ幅が大きいタイプにはどんなリスクがあるのか。ひとつの例をみてみましょう。たとえば、固定期間選択型5年ものの店頭表示の金利は3・25%ですが、これを当初5年間は2・2%引き下げて1・05%としている金融機関があります。6年目からも金利引下げが続くのですが、引下げ幅は1・4%になります。

店頭表示の3・25%で3000万円を、35年元利均等返済・ボーナス返済なしで利用すると毎月の返済額は11万9681円です。これが、金利1・05%になると8万5386円に減少します。実に3万5000円近く負担が軽減されるのですから、大きなメリットではあるでしょう。しかし、5年が経過するとどうなるのでしょうか。仮に、現在とまったく同じ金利が続いていたとしても、3・25%の店頭表示金利からの引下げ幅は1・4%になりますから、適用金利は1・85%ということです。その場合の返済額は9万6768円。金利が上かっていなかったとしても、返済額は13・3%増えてしまう計算です。その上、金利が上がったらどうなるのでしょうか。

5年の間に金利が1%上がっていると、適用金利は2・85%で、返済額は10万9008円に増え、増額率は27・7%に、2%上がっていると12万3571円で、増額率は44・7%、さらに3%上がっていると13万9092円で、増額率は62・9%にも達します。若いうちなら5年あればある程度は収入も増えるでしょうが、5割も6割も増えるという人はそうそういないでしょう。ローン破綻に陥ってしまう可能性が高いのではないでしょうか。ただ、返済期間を短くすれば、この増額率はかなり抑えることができます。ですから、固定期間選択型10年ものを、返済期間20年で利用するといったケースであれば、この当初の金利引下げ幅が大きいタイプを利用してもいいでしょう。反対に、30年、35年といった長い返済期間の人は、このタイプは利用しないほうが無難です。

フラット35S金利引下げなどで利用者が急増している

このフラット35は、先にもふれたように民間金融機関を通して申し込むことになります。制度がスタートした当初は、利益幅の大きい自前のローン販売に力を入れるため、フラット35を扱わない金融機関もありましたが、最近ではメガバンクから信用金庫・信用組合までほとんどの金融機関が扱うようになっています。加えて、預金機能を持たない住宅金融専門の、いわゆるモーゲージバンクも多数参入しています。フラット35を利用するときの手続きの流れは、利用者は民間金融機関に借入れの申込みを行い、金融機関では機構の定めるフラット35の基準に照らして申込人に関する審査を行います。その審査結果は1、2週間程度で出て、本人に通知されます。それを踏まえて先にふれた機構の技術基準に合致している物件かどうかの審査を行います。

最初に設計図面を提出して検査の申請を行い、合格してから着工という段取りになります。その後も中間検査、竣工検査を経て融資契約、資金受取りという流れです。利用者数は2008年度までは減少傾向でしたが、2009年度には急増しています。2009年度は新築住宅の着工戸数が45年ぶりに年間80万戸を割った年ですが、そのなかでフラット35だけが急増した背景としては、何よりフラット35Sなどによる金利引下げ効果が大きかったようです。以前はせいぜい年間数万件だったものが、2010年度~2012年度は年間の申込み件数が10万件を超えました。金利引下げ制度の影響がいかに大きいかを物語る数字といっていいでしょう。

民間金融機関はフラット35の取扱いを広げる一方で、自前の独自ローンの充実にも力を注いでいます。先にもふれたように、銀行としては機構と提携のフラット35はあくまでも手数料ビジネスであり、本来的には自前のローンの利用者を増やしたいというのが本音。その利用者拡大の決め手としてほとんどの銀行が実施しているのが、金利引下げ制度です。一定期間に限定してのキャンペーンとして、一定条件を満たす人を対象に金利を下げているわけです。変動金利型であれば店頭表示金利2・475%から1・6%引き下げて0・875%にする、固定期間選択型3年ものなら本来は2・70%のところを1・60%下げて1・10%にするといった具合です。

フラット35適合物件なら安心感が高まる

このほか、フラット35を利用するためには、機構が定める技術基準を満たしていることという条件もあります。これは、従来の公庫融資の基準とほぼ同様の内容であり、建築基準法で定める最低限必要な基準以上のもので、これをクリアしていれば多少なりとも安心感が高まります。この技術基準を満たしているかどうかに関しては、第三者機関による物件検査を受けてそれに合格する必要があります。そのための検査手数料が必要で、これは物件や検査機関にもよりますが、通常は2、3万円程度ですむようです。ただし、最近は事前にこの検査をクリアしているため、個別の検査は必要のない物件(フラット35登録マンション)も若干ずつですが増えてきています。

以上の枠組みは機構が決めるため、どの金融機関で申し込んでも共通の条件になります。これに対して、金利や融資手数料は金融機関が独自に決めることができます。たとえば、金利に関しては、2013年5月でみると、返済期間21年以上は1・81~2・76%までとなっています。金融機関によってこのフラット35を積極的に増やしていこうという方針の金融機関は金利を低く設定していますし、どちらかといえば自前のローンのほうに力を注ごうとする金融機関は高くなる傾向があり、こうした違いが生じています。ですから、利用者としては住宅金融支援機構のホームページなどで各金融機関の最新の金利情報をチェックして、自分か利用できる金融機関のなかで、どこが一番金利が低いのかなどの情報を確認しておく必要があります。

担が少ないほうがいいのかも、十分に検討しておく必要があります。というのも、通常、住宅ローンは自分たちが買おうとしているエリアを営業対象とする支店がないと利用できないのが普通だからです。したがって、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行などのメガバンクのローンを利用したいと思っても、自分が買おうとしている都市に支店がないと利用できないことが多いのです。支店網を持たないノンバンクなどでは、担保評価を外部機関に委託するなどの形で、できるだけ広い地域で利用できるように配慮していますが、それでも大都市圏などに限られることが多いようです。そうなると、地方都市などでは、結局、地元の地方銀行や信用金庫などに限定されてしまうこともあるので注意が必要です。また、融資手数料も若干異なっています。3万円台から5万円台が多いのですが、なかには10万円台のところもあります。

さらに、後に詳しくふれますが、「ディスカウント方式」を採用、当初の事務手数料を高くして、その分金利を低くしているところもあります。当初の負担が多少重くなっても、金利が低いほうがいいのか、それとも多少金利が高くても、当初の負担が少ないほうがいいのかも、十分に検討しておく必要があります。このように金融機関によって金利や事務手数料にはかなりの幅があります。旧住宅金融公庫の融資はどの金融機関で申し込んでも同じ金利、同じ手数料でしたが、フラット35はそうはいきません。事前にさまざまな点から各金融機関の条件などをチェックして比較検討した上で決めるようにしなければならないわけです。なお、フラット35(買取型)の融資条件については、2007年4月の独立行政法人化に合わせて、次のような改定が行われています。

①融資割合が従来の8割から9割に引き上げられた。したがって、1割の頭金で購入が可能に
②ガン、心筋梗塞、脳卒中の三大疾病保障を付けることができるようになった。ただし、一定の保険料の支払いが必要
③抵当権設定登録免許税が非課税だったのが、課税されるようになった。税率は借入額の0・1%

このフラット35には、「フラット35S」と呼ばれる優良住宅取得支援制度があります。通常のフラット35の適合条件に合致していると同時に、省エネ性能などに優れた住宅の金利を引き下げるというものです。金利AプランとBプランがあり、Aプランは当初10年間、Bプランは当初5年間、金利が0・3%引き下げられます。それぞれに、次の条件のうちいずれかひとつを満たしている必要があります。

①金利Aプラン
・「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づく住宅事業主の判断基準(通称・トップランナー基準)に適合する住宅
・長期優良住宅
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅
・高齢者等配慮対策等級4以上の住宅(共同住宅の専用部分は等級3でも可)

②金利Bプラン
・省エネルギー対策等級4の住宅
・劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅(共同住宅については、一定の更新対策)
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅
・免震建築物
・高齢者等配慮対策等級3以上の住宅

いずれもさほど厳しい基準とはいえず、実際にフラット35を申し込む人の8割前後はこのフラット35Sだそうです。入居後の安全・安心などが高まる上、金利も低くなるのですから、ぜひともフラット35Sを利用できる物件にしたいものです。さらに、2009年の長期優良住宅制度のスタートに合わせて、長期優良住宅と認定された物件に関しては、最長50年までの返済が可能な、「フラット50」を利用できるようになりました。この50年返済を利用できるのは購入額の6割までに限られますが、不足分は通常のフラット35やフラット35S、その他民間ローンなどを利用できます。ただ、必要額の6割までに限られる上、フラット35より金利が若干高くなること、利用できる機関がまだ少ないこと、また一戸建てでは長期優良住宅が増えているものの、分譲マンションでは極めて少ないことなどもあって、フラット50の利用は期待されたほどには増えていないようです。